手術 日記 第2章

【第2章】手術当日、麻酔の記憶と、目覚めた直後から始まる「股関節の違和感」との闘い

ついに手術当日の朝が来た。脊柱管狭窄症の手術といっても、今回は脊椎固定術に向けた「土台作り」のための1回目の手術だ。とはいえ、全身麻酔を伴う大掛かりなものには変わらない。

今回は、手術室へ向かう緊張感、麻酔で意識が落ちる瞬間、そして目覚めた直後に襲ってきた予想外の「股関節の違和感」について、リアルな体験を綴る。これから手術を受ける人の心の準備になれば嬉しい。


十六夜の月と、手術室への道

起床時間の6時に目が覚めた。いよいよだ。 看護師さんの指示に従い、手術着に着替える。この時、下着は履かずに素肌に直接手術着をまとう。なんとも言えない心もとなさを感じる瞬間だ。用意していたオムツは履かずに、手術室まで案内してくれる看護師さんに「お願いします」と手渡した。麻酔がかかった後に履かされるのだろう。

「手術室へは8時30分に歩いていきますからね」
朝の検温の際、看護師さんから告げられた。 ストレッチャーで運ばれるのではなく、自分の足で戦場へ向かうわけだ。

ふと窓の外を見ると、十六夜(いざよい)の月が浮かんでいた。独特の緊張感の中で眺める月は、やけに美しく、静かに見える。


コロナ禍を経て変わった「家族の立ち会い」

以前の手術のときは、家族が控室で待機していたものだが、コロナ禍を経てルールが変わったようだ。家族は実際に病院へ来なくてもOKになってた。

そのため、今回は妻の立ち会いはなし。手術が無事に終わったら、主治医から妻へ電話連絡を入れてもらう手はずになっている。ひとりで手術に向かうのは少し心細いが、妻に余計な心配や通勤時間帯の移動や長い待ち時間の負担をかけずに済むのは、ある意味合理的で良いシステムだと思った。


ぼやけた視界の先、手術室への道

時間になり、院内エレベーターで移動し、手術室受付を済ませる。 手術室にはメガネをして行けないため、視界はぼやけている。その視界の中に、10室ほどの手術室の扉がずらりと並んでいるのが見える。改めてここが大病院であることを実感する。

そのうちの1カ所に入り、病棟の看護師さんから手術室(オペ)ナースさんへと引き継がれる。 手術台横のストレッチャーに乗せられ、恒例の氏名確認。「マッキーです」と名乗る。

確認が終わったところで、右手の甲に点滴が1本入る。ここから最初の麻酔薬が流し込まれるのだ。 意識が遠のく直前、ふと頭をよぎったのは「ああ、また意識がない間に尿の管を入れられたりと、恥ずかしい思いをするのか…」という、なんとも言えない情けない気持ちだ。


あ、血管に冷たいモノが入ってくる。麻酔薬が入って…

■■■ 意識なし ■■■

(この間、記憶は完全に途切れる。痛みも恐怖もない、完全なる無の時間だ。)


目覚め、そして「土台」が埋め込まれた違和感

「手術は終わりましたよー」

遠くで声が聞こえ、意識が戻ってくる。 気がつくと身体は横向きになっていて、両手に点滴かつ腰の部分からはドレンの管(血や浸出液を出す管)が出ているのが分かった。 7年前の手術の際は、麻酔の管のせいで胸や唇が腫れ上がり、喉の猛烈な痛みに数日間苦しんだが、今回は胸や喉の痛みはほとんどない、手術スタッフの技術が素晴らしかったのか、そこは大丈夫だった。

病室から運ばれてきていた自分のベッドに移され、病棟へ戻る。 窓を見ると夕暮れ時になっていた。6時ごろだろうか。

意識がはっきりしてくると、現実が襲ってくる。 傷跡が重く、鈍く痛む。だが、それ以上に辛かったのが「両股関節の不快感」だ。

足を閉じようとすると、股関節に強烈な不快感と痛みが走り、どうしても足を閉じられない。 仕方がないので、看護師さんに頼んで病院の抱き枕を借り、ヒザの間に挟むことでなんとか姿勢を保った。


吐き気、渇き、そして医師の説明

股関節の不快感と傷の痛みが限界に近づいたので、手元の痛み止め点滴の増量ボタン(PCAポンプ)を押す。

すると今度は、副作用の吐き気に襲われた。 慌ててナースコールを押し、看護師さんに吐き気止めの点滴を入れてもらう。吐き気は少し収まった。
12時間以上水を口にできなかったためか、喉の渇きも強くなる。 しかし、手術後3時間は水を飲むことが許されない。ひたすらこの渇きに耐えるしかなかった。

しばらくして、執刀した主治医が様子を見に来てくれた。
「手術は成功しました。今回の『土台』作りはうまくいきましたよ。」

先生の説明で、股関節の痛みの原因が判明した。 今回の手術は、5日後の本番に備え、腰椎部分をガッチリ支えるために骨盤の左右に長いボルトを打ち込んでいる。
私の股関節の不快感・違和感は、この骨盤に打ち込まれたボルトが原因だったようだ。

「まだ前段階の手術でこれか…」 本番の脊椎固定手術は5日後だ。土台作りでこの痛みと不快感なら、本番はどうなってしまうのだろう。 そんな不安を抱えつつ、今はただ、痛み、不快さ、吐き気、そして渇きをひたすら耐えてやり過ごすのだった。

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